旅のお供

深尾尚子

本物のポップコーンで作った実物大のクマやプードル、巨大なたい焼きの彫刻を木になるように設置した作品など、食に関係する作品を多く発表してきた作者です。
そんな作者がきのくに線沿線を旅する中で、この地域の郷土料理“めはりずし” に興味を持ち今回の作品の発想を得ました。めはりずしは高菜でご飯をくるんだお弁当用のおにぎりで、見た目のインパクトや独特の風味で多くの人に親しまれています。作者には丸いその姿の中に、この地域の人々が旅立つ人を送り出す気持ちや、熊野への誇りや敬意などがギュッと詰まっているように思えたのです。
本作品ではめはりずし同様、お弁当で持ち歩く機会の多いアルミカップを材料として用い、ポップな姿として表現されためはりずしを駅内に配置しました。聖地と呼ばれる熊野古道の精神的な力を意識しつつ、旅が始まる場所で旅人をもてなす人、旅の安全を祈り送り出す人の存在を、身近な素材を使って親しみのある表現でかたちにします。