drifting story -漂う物語-

鈴木知道

大潮や台風の後には、工房前の海辺にたくさんの流木が流れ着きます。そして次の大潮までにはたいていどこかへ流れていき、また新たな漂着があります。浜から浜へと漂うことを繰り返す海の冒険者たち<driftwood /漂流木>を私の手で再び陸に上げ、その表皮に少しだけ焼き絵を施します。
木肌を焦がしながら描く<焼き絵>という行為をしながら、焦げる香りや目に浸みる煙、木肌の感触とともに、体の奥底から言葉以前の原始的な感覚が泡のように立ち上ってくるのを感じ、木と対話しながら漂流木の物語を表皮に浮かび上がらせます。
陸から海へ、海から陸へ。紀の国の駅舎からまたどこかへ。
漂流木の、旅の寄り道といったところでしょうか。
紀の国トレイナートの駅舎に物語を纏うdriftwood がしばし漂着します。