那智の滝プロジェクト

臼田那智

駅待合室にある無数の赤い筒は、那智の滝のフォルムをイメージしている。筒には地元住民や観光客によるメッセージが書かれてあり、訪れた人もその場で何かを書き、新たに筒を取り付け、別の筒を一つ持ち帰る。見ず知らずの人からのメッセージを受け取る、手紙交換のような行為により、観光客や地元住民、地元住民同士、観光客同士に、ほんの少しの繋がりが生まれ、それにより何かが起こるかもしれない。那智の滝のいつまでも流れ続ける現象は、いつまでも変化を続ける、人間の「生きる」ことそのものに対する映し鏡のように見える。駅舎に訪れた人が付けては外す行為を繰り返し、作品の形も微妙に変わり続ける。止まない那智の滝のように、いつまでも変化し続ける「生きる」作品となることを願って。